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2010年12月 アーカイブ

寝具革命の実態

第二次世界大戦の後で、日本の寝具史は再び大きな変革期に直面することとなりました。


そして、その現象はまず素材の面から動きはじめたのです。


掛けぶとんの面についてみると、最初は化繊ワタ、ついで合繊ワタを従来の木綿ワタに代えて使用するこころみが突破口でした。


これらのワタは、木綿ワタにくらべてやや割高ではありましたが、何よりも軽くて、ちょうど高級な布団 羽毛のような感触をあたえる強味があったのです。


初期には吸湿性や保湿力という点では多少の難点があったのですが、弾力性(弾性復元力)が常に一定しているため、木綿ワタの場合のように定期的に打ち直しをするという必要がほとんどないという利点がありました。


一方、これらのワタを包む「側(がわ)」(外被)についてもまた、化学繊維や合成繊維が使用されましたが、それらは絹のような肌ざわりと、木綿よりも高い強靭性を特色としていました。


・・・と同時に、それは織布の当初から、ふとんの寸法に合わせて生産することもでき、加工の工程においても、キルティングによって側(がわ)と中味とを定着させるという、綿(めん)ぶとんは全く違った方法がとられたのです。


この新製品は、従来の蒲団と区別されるため、洋ふとん、洋式掛ふとん(洋風)の名で呼ばれてきたのですが、この名称が与えられた理由は、その素材面の変革と共に、そのデザインの著しい変容のためでもあったと見てよいですしょう。


つまり、古来の蒲団は、もともと着物(呉服物)のために生産された「反物」を応用してつくったものが多く、そのため、その布の幅もデザインも、和服の形姿を前提として決定されてきたものです。

綿屋という業者

洋ふとんの側は、最初からふとんの素材として織られ、もっぱらその用途を目指してデザインされたものです。


その結果に著しい相違が現われるのは、むしろ当然のことといってよいでしょう。


この洋ふとんが誕生したのは昭和30年前後のことでしたが、現在では市場における既製品の大半を占有し、その面でみる限り現在はあたかも洋ふとんの時代といった観を抱かせます。


しかし、これはあくまでも都市社会における二次製品の店頭風景にすぎないのです。


全国的にみた家庭での保有率という点では、またまだ従来の綿寝具が根強い力を発揮しています。


昭和37年度に東京都と青梅商工会議所が関東の五県十都市の消費者を対象として実施した市場調査の報告によると・・・


木綿小幅夜具42パーセント、銘仙夜具24パーセントに対し、洋掛ふとん7パーセントという保有率が現われています。


これは掛ぶとん、敷ぶとんを含めた総合の比率です。


掛ぶとんだけを対象とした場合には、恐らくこの倍に近い指数が現われることになるのでしょうが、それにしてもその保有率は7人に1枚の割合にすぎないことになります。


その後の20年間に、この比率は洋ぶとんに有利な方向に進んでいることは疑いありませんが、大勢をくつがえすにはまだ多少の時間が必要でしょう。


したがって一部のジャーナリズムに唱われているような「寝具革命」があるとしても、それはまだ将来のことに属することになります。


しかし、現在われわれの当面しつつある問題に、高級 羽毛 布団などの綿寝具業者が古綿の打ち直しを廃業しつつある現象があります。


かつては綿屋なる業者があって、それが寝具の加工や販売を兼業するものでしたから、古綿の打ち直しは、じつに綿寝具業者の本業であったはずです。

布団の未来

綿屋という業者が本業を廃止して、副業であった寝具の二次製品の販売店、つまり寝具商店に転向しつつあるわけです。


もしこの現象がさらに拡大してくるならば、われわれの家庭にある寝具の木綿ワタは、いつかは廃業せざるを得ないことになるでしょう(木綿ワタの打ち直しは2年に1度が理想とされています)。


・・・してみるとこの現象は単に業界の一角における異変というのみではなく、風俗史上看過ごしえない問題点となる可能性を多分にはらんでいるのです。


以上にもっぱら羽根 布団の面について述べたのですが、敷ぶとんの方面にもほぼ同様の現象が現われています。


従来の敷布団に代わるものとして、合成ゴムのマットレスとかフォーム・ラバーと銘うった製品があらわれたのは昭和25、6年頃でした。


前にあげた市場調査の結果でも、保有率12パーセントとあって、下敷夜具のみを対象とすれば、すでに4人に1人がこの種の製品を使用していたことになります。


この新製品は何よりもまず弾性復元力にすぐれており、したがって打ち直しはもとより、被に干す必要もないという利点が買われたものです。


しかし、使用の結果はかえって寝疲れするという反省があり、学界からもいわゆるフワフワ・ムードに対する警告があって、目下のところ一つの転機に立ち至っているようにもみうけられます。


今ひとつ、畳そのものにも「化学畳」という新製品の出現があります。


これは昭和40年ごろから一般市場に出回ってきたもので、畳表と縁(へり)とは従来と同じですが、床(とこ)が違っています。


従来の畳床は藁を素材としていましたが、化学畳は合成繊維板と発泡体(はっぽうたい)のスチロール樹脂を配合したもので、軽く(従来の畳の4分の1程度)、耐火性があり、湿気やほこりを吸わないといった利点があるといいます。


畳は近世にはいってから寝具としての役割をフトンにゆずったわけですが、畳が日本住宅でどの程度の利用度を保っていくかは、将来の住宅構造あるいは生活様式に重大なかかわりがあります。


ひいては未来の寝具史にもかかわりがある以上、畳の行方も決して軽視すべきでないと考えています。

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